【ゼロから始める創業術 Vol.8】
社会保険の扶養と所得税の扶養、何が違うの?
こんにちは、Fukuoka Startax税理士事務所の林です。
今回は、創業者の方から意外と質問が多い「扶養」について解説します。
「配偶者を扶養に入れたいんですけど…」って相談、本当によく受けるんですが、ここでよくある勘違いが「扶養は1つしかない」って思い込みです。
実は、「社会保険の扶養」と「所得税の扶養」は全く別物なんです。
これを理解してないと、「え、扶養に入れると思ってたのに入れなかった!」とか「知らないうちに損してた!」ってことになります。
特に2024年10月から、社会保険の適用範囲が拡大されて、さらに注意が必要になってきました。
今回は、この2つの扶養の違いと、最新の制度変更について、わかりやすく解説します。
「扶養」って、何が違うの?
まず、これを理解してください。
「扶養」には2種類あります。
- 社会保険の扶養 → 健康保険と年金の話
- 所得税の扶養 → 税金の話
この2つ、目的も条件も全然違うんです。
だから、「社会保険では扶養に入れるけど、所得税では入れない」とか、その逆もあります。
よくあるのが、「年収103万円以内なら扶養でしょ?」っていう認識。
これ、所得税の話だけなんです。社会保険は別の基準があります。
2つの扶養、何が違うのか比較してみる
わかりやすく表にまとめました。
| 項目 | 社会保険の扶養 | 所得税の扶養 |
|---|---|---|
| 目的 | 健康保険・年金の保険料を払わなくて済む | 所得税・住民税が安くなる |
| 収入の壁 | 年収130万円未満(月108,333円未満) | 年収103万円以下(所得48万円以下) |
| 判定時期 | これから先の見込み年収で判断 | その年の実際の年収で判断 |
| 対象者 | 配偶者、子、親など(生計を一にする) | 配偶者、親族(6親等以内) |
| メリット | 年間数十万円の保険料が不要 | 38万円〜48万円の所得控除 |
見ていただくとわかる通り、全然違いますよね。
2024年10月からの変更点、知ってますか?
ここ、めちゃくちゃ大事なんですけど、2024年10月から社会保険の適用範囲が広がりました。
今までは「従業員101人以上の会社」だけが対象だったんですが、今は51人以上の会社で働いてる人も対象になりました。
【新しい条件(2024年10月〜)】
従業員51人以上の会社で、以下の全てに当てはまる人は、社会保険に加入が必要になります:
- 週の労働時間が20時間以上
- 月収が88,000円以上(年収106万円以上)
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
つまり、「130万円の壁」の前に「106万円の壁」ができたんです。
実際にあった相談。
奥さんがパートで月10万円稼いでた家庭。「130万円以内だから扶養のまま」って思ってたら、会社の規模が対象になって、いきなり社会保険に加入しないといけなくなったケース。
年間で約15万円の負担増になって、びっくりしてました。
「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」って?
この「○○万円の壁」っていう言葉、ニュースでよく聞きますよね。
整理すると、こうなります:
【103万円の壁】所得税の扶養の壁
年収103万円を超えると、所得税の扶養から外れます。
配偶者控除(38万円)が使えなくなるので、世帯全体で見ると税金が増えます。
ただし、103万円を超えても150万円までは「配偶者特別控除」があるので、いきなり大損するわけじゃないです。
【106万円の壁】社会保険の新しい壁(2024年10月〜)
従業員51人以上の会社で働いてる場合、年収106万円を超えると社会保険に加入が必要。
健康保険と厚生年金で、年間約15万円の負担が出てきます。
【130万円の壁】社会保険の従来の壁
会社の規模に関係なく、年収130万円を超えると社会保険の扶養から外れます。
自分で国民健康保険と国民年金を払う必要が出てきて、年間約30万円の負担です。
これ、知らないで働いてると、手取りが思ったより減ってびっくりすることになります。
結局、いくらまで働けばいいの?
「じゃあ、いくらまでに抑えればいいんですか?」って絶対聞かれます。
これ、家庭の状況によります。
でも、よくあるパターンで整理すると:
【パターン1】扶養のまま、負担を最小限にしたい
- 小さい会社(50人以下)で働く → 年収130万円未満に抑える
- 大きい会社(51人以上)で働く → 年収106万円未満に抑える
【パターン2】多少負担が増えても、もっと稼ぎたい
- 年収150万円以上を目指す
- 106万円や130万円の「壁」を気にせず、しっかり稼ぐ方が結局得
「106万円ちょうどで抑える」とか「130万円ちょうど」とかって中途半端が、一番損するパターンです。
超えるなら、思い切ってもっと稼いだ方が手取りは増えます。
創業者の配偶者、どうすればいい?
創業したばかりの人から、よく聞かれるのがこれです。
「自分は個人事業主です。配偶者はどうすればいいですか?」
【ケース1】配偶者が別の会社で働く場合
これは、上で説明した「106万円の壁」「130万円の壁」を気にしながら働けばOKです。
会社の規模と年収を確認してください。
【ケース2】配偶者が自分の事業を手伝う場合
これ、ちょっと複雑です。
- 「青色事業専従者」として給料を払う → 扶養から外れるけど、経費にできる
- 無給で手伝ってもらう → 扶養に入れたまま(ただし経費にはできない)
どっちが得かは、事業の利益や配偶者の働き方によります。
税理士に相談して、シミュレーションしてもらうのが一番確実です。
両方の扶養に入ることってできるの?
「社会保険と所得税、両方の扶養に入れますか?」って質問、よく受けます。
答えは、「条件を満たせば両方OK」です。
例えば:
- 年収100万円 → 社会保険も所得税も、両方扶養に入れる
- 年収110万円 → 所得税の扶養からは外れるけど、社会保険の扶養には入れる(会社の規模による)
- 年収140万円 → 両方とも扶養から外れる
つまり、「扶養」って言っても、どっちの扶養かで全然違うんです。
だから、「扶養に入れますか?」って聞くときは、「社会保険? 所得税?」って確認するのが大事です。
■ 最後に
扶養の話、複雑ですよね。
「103万円」「106万円」「130万円」って、数字がいっぱい出てきて、混乱する気持ちわかります。
でも、知らないと損します。
実際、「もっと早く知ってたら、働き方変えてたのに…」って後悔する人、結構います。
特に2024年10月から制度が変わったので、今までは大丈夫だった人も、影響が出てる可能性があります。
一度、自分の状況を確認してみてください。
大事なのは:
- 社会保険と所得税の扶養は別物
- 2024年10月から106万円の壁ができた
- 中途半端に抑えるより、思い切って稼ぐ方が得なこともある
「自分の場合どうすればいいかわからない…」って人は、税理士に相談してください。
家族の状況を見ながら、一番得する働き方をシミュレーションできますよ。
【次回予告】
Vol.9では、「開業届と青色申告承認申請書の出し方」について、実際の手順を解説します。お楽しみに!
