【ゼロから始める創業術 Vol.4】
創業時の税務、何から手を付けるべき?
こんにちは、Fukuoka Startax税理士事務所の林です。
これまで融資や事業計画書についてお伝えしてきましたが、今回は経営を支える上で避けては通れない「税務」の話をしましょう。
正直なところ、「税務なんて後回しでいいよね」と考えている経営者仲間は、実はすごく多いんです。
その気持ち、私もなんとなく理解はできます。事業を立ち上げたばかりの頃は、営業やサービス作りに全力投球で、税金の細かいことまで考える余裕なんてないのが普通ですよね。
ただ、この「後回し」が、後になってからボディブローのように効いてくるんです。
実際、私たちの事務所にご相談に来られた際、「もう少し早く相談してくれれば、もっと良い形にできたのに……」と悔しい思いをすることも少なくありません。
今回は、100社以上の創業をサポートしてきた専門家の視点から、「創業時にこれだけは知っておいてほしい」という税務のポイントを、分かりやすく整理してお伝えします。
まず迷うポイント:法人にするか、個人事業主で行くか
創業するとき、最初に悩むのがここですよね。
「会社を作るべきか、まずは個人事業主としてスタートすべきか」。
よく「どっちが正解ですか?」と聞かれますが、実はこれ、決まった正解はありません。
どんな事業を目指しているのか、将来どのくらいの規模にしたいのかによって、選ぶべき道が変わるからです。
【個人事業主で始める場合】
- 税務署に「開業届」を出すだけで、すぐにスタートできる
- 所得税や住民税を自分で納める形になる
- スモールスタートなら、事務的な負担が少なくて済む
フリーランスとして独立する場合や、まずは一人で小さくお店を始めたい、という方は個人事業主が向いています。
【法人(会社)で始める場合】
- 設立登記の手続きが必要(司法書士などのプロに頼むのが一番スムーズです)
- 法人税や消費税など、会社ならではのルールが適用される
- 社会的な信頼が高まりやすく、銀行からの融資でも有利になることが多い
最初から組織として大きく展開したい、あるいは取引先が「法人でないと契約できない」という条件がある場合は、法人設立を選びましょう。
一番現実的なのは、「まずは個人事業主で始めて、売上が伸びてきたタイミングで法人化(法人成り)する」というパターンかもしれません。
確定申告は「経営者の信頼」を映す鏡
個人事業主として活動するなら、必ずやってほしいのが「確定申告」です。
これは単なる税金の計算ではなく、「自分はしっかり経営を管理しています」という信頼の証明でもあります。
「確定申告って面倒くさい……」と感じるのも分かります。確かに手間はかかります。でも、ここを疎かにすると、将来のチャンスを逃すことになりかねません。
実際によくあるトラブルの例:
- 無申告だったせいで、いざという時に銀行からお金を借りられない
- 突然の税務調査で、数年分の税金をまとめて払うことになり、キャッシュが回らなくなる
- 領収書を紛失して、せっかくの経費が認められない
過去には、3年分溜めてから相談に来られた方もいました。そうなると本当に大変です。記憶を掘り起こしながらの作業は、経営者の貴重な時間を奪うだけでなく、精神的なストレスも相当なものです。
【申告で後悔しないためのコツ】
- 日々の記帳を習慣にする(月に1回チェックするだけで全然違います)
- 領収書は捨てずに保管(スマホで撮影しておくのも有効な手段です)
- 「これどうすればいい?」と思ったら、早めに税理士に聞く
「後でやろう」が一番の強敵です。溜めれば溜めるほど、やるべき作業は重くなります。
賢い「節税」にはルールがある
「節税ってどこまでやっていいの?」という質問もよく受けます。
答えはシンプルです。「法律で決められたルールの中なら、どんどんやるべき」です。
【まずチェックすべき項目】
1. 事業に関わる経費を漏らさず計上する
「こんなものまで経費にしていいのかな?」と遠慮している人をよく見かけます。正当な理由があるなら、しっかり計上しましょう。
例えば:
- 仕事で使うPCやスマートフォンの購入代金
- カフェでの打ち合わせ代や、取引先との会食代
- スキルアップのためのセミナー代や本代
大切なのは、「これは仕事のために必要でした」と胸を張って説明できることです。プライベートの支出を混ぜるのはNGですが、仕事に必要なものは正しく計上しましょう。
2. 青色申告をフル活用する
これはもう、創業時の必須科目と言ってもいいでしょう。
青色申告を選び、e-Taxでの申告などの条件をクリアすれば、最大65万円の特別控除が受けられます。利益から65万円を引いた額で税金を計算できるので、インパクトはかなり大きいです。
「難しそう」と思うかもしれませんが、最近の会計ソフトは優秀なので、慣れれば誰でもできます。やらない理由がないくらいお得な制度です。
3. 設備投資の優遇制度を知る
大きな買い物(PCや機械、車両など)をするときは、税制の優遇がないか確認してください。
「中小企業経営強化税制」や「少額減価償却資産の特例」など、買った年に一気に経費にできる仕組みがあります。これを知っているだけで、手元のキャッシュフローが劇的に改善することもあります。
融資を勝ち取るための税務
意外と知られていないのが、「税務をしっかりしていないと、融資の審査にすら乗れない」という厳しい現実です。
以前、融資を受けたいという方が来られましたが、売上が少ないからと申告をしていませんでした。しかし、無申告の状態は、金融機関から「お金の管理ができない人」とみなされます。結果、どんなに良い事業計画があっても融資は通りませんでした。
【銀行が見ている税務のポイント】
- 確定申告や決算が期限通りに行われているか
- 税金の滞納がないか
- 過去数年分の申告書類がすぐに提出できるか
つまり、税務を整えることは、銀行からの「信頼」を買うことと同じなんです。しっかりしている経営者だと思われれば、交渉もスムーズに進みます。
■ 最後に伝えたいこと
税務の作業は、正直言って地味で手間がかかります。私も税理士として、皆さんが本業に集中したい気持ちは痛いほど分かります。
でも、創業時に正しい知識で土台を作っておけば、将来の自分を助けることになります。数年後に「あの時やっておいてよかった」と思えるはずです。
「自分一人では不安だ」と感じたら、ぜひ早めにプロを頼ってください。最初のアドバイスがあるだけで、その後の経営のスピード感や安心感が全く変わってきます。
税務を面倒な義務としてではなく、事業を強くするための強力な武器にして、一緒に成長していきましょう!
【次回予告】
Vol.5では、「会計処理と経営管理」をテーマに、数字を使って経営をコントロールするコツについてお話しします。お楽しみに!
公庫 創業融資・無料診断
5つの質問に答えるだけで、借入可能額の目安を判定します。
※本診断の結果は、融資の実行を保証するものではありません。
