公庫の担当者が「現地調査」で見ているのは、設備投資の確認ではなく周辺環境だった
創業融資の申込から数週間後、突然こんなお知らせが来ます。「来週、担当者が現地調査に参ります」
多くの起業家は、そこで慌てます。「設備がちゃんと揃っているか確認されるのか」「購入した機械が計画書通りか見られるのか」と、設備投資を必死に確認しようとするんです。
ですが正直に申し上げると、公庫の担当者は設備投資の詳細なんか見ていません。本当に見ているのは、あなたの周辺環境と競合店舗です。
公庫の現地調査で実際にチェックされている5つのポイント
1. 周辺の人通りと年代層
飲食店や小売店を開業する場合、本当に顧客が歩いているかどうかを確認されます。
私が実際に立ち会ったケースなんですが、ラーメン店の創業者が「初年度は1日200人の来客を見込んでいる」と計画書に書いていました。
ですが現地調査で店舗周辺を30分観察したところ、その時間帯の人通りは1日200人どころではなかったんです。担当者はそれを見て「この計画書の根拠は甘い」と判断しました。
計画書には「月額120万円の売上(顧客単価10,000円×月12人)」と書かれていました。
ですが現地調査で店舗周辺を歩いてみると、圧倒的に高齢者が多く、若い女性の姿はほとんど見かけなかったんです。
計画書の顧客像(30~50代の働く女性)が、実際の周辺人口と合致していなかったのです。融資は一度見送りになりました。
2. 競合店舗の数と実態
これが最も重要です。あなたが計画書で「競合は3社」と書いていても、実際に歩いてみると5社いた、なんてことはよくあります。
担当者は、その周辺の競合を一軒ずつ見て回り、営業時間、客層、価格帯、混雑状況まで確認するんです。
カフェの開業者が「近所に競合カフェは2店舗しかない」と計画書に書いていました。
ですが担当者が現地調査に行くと、その周辺には同じようなカフェが実は5店舗も営業していたんです。
さらに、大型チェーンのコーヒーショップも2店舗ありました。計画書の競合分析が全く甘かったというわけです。
3. 実際の競合店の客足と営業実績
「競合がいる」という事実だけでなく、その競合店が実際に繁盛しているのか、閑散としているのかも見られています。
ランチ時に競合店に客が殺到していれば、「この立地は本当に需要がある」という証拠になります。逆に、競合店が常に客が少なければ、市場そのものが小さい可能性があります。
- 担当者が見る視点:同じ立地で既に営業している競合店が繁盛しているなら、あなたの事業計画の売上根拠も信頼できる。逆に、競合店が暇そうなら、市場そのものに問題がある可能性が高い
4. 通勤ルートや駐車場の実態
立地の可能性を判断するために、実際の人の流れを観察されます。
計画書に「駅から徒歩5分」と書かれていても、実際には坂道があったり、信号が多かったりするかもしれません。また、駐車場があると書いていても、実際には狭くて使いづらいかもしれません。
「駅から近いので患者が来やすい立地」と計画書に書いていました。
ですが現地調査で確認すると、駅から向かうには大きな交差点を渡る必要があり、実際には「駅の反対側」に近い立地だったんです。
そのため、実際には患者が来づらい立地だった。計画書の立地分析が甘かったと判断されました。
5. 市場トレンドの変化
最後に、その地域全体のトレンドを見られています。
例えば、「ラーメン店がブームだから」と計画書に書いていても、現地に行ってみると、この3年でラーメン店が3軒も閉店していた、なんてことがあります。
それは「ブームが終わった地域」という証拠。あなたの計画書の市場分析が、古い情報に基づいていたことになります。
「計画書」と「現実」がズレているのは、なぜ起こるのか
実は、多くの起業家が陥る落とし穴があります。それは、「自分の希望的観測で市場を分析している」ことなんです。
例えば:
- 希望的観測の例1:「ここは駅から近いから、絶対に客が来る」という主観で計画書を書く。だが、実際には競合が多かったり、流れが悪かったりする
- 希望的観測の例2:「この商品は新しい市場だから、競合が少ない」と信じ込む。だが、実際には同じようなビジネスを始めた人がいっぱいいる
- 希望的観測の例3:「ネットで調べたら、この地域は人口が増えている」と書く。だが、実際には高齢化が進んでいる
公庫の担当者は、この「希望と現実のズレ」を見抜くために、現地調査をするんです。
現地調査で「プラス評価」を得るために、事前にやるべきこと
- 設備投資の詳細を整える
- 計画書と異なる設備を用意する
- 従業員に「良く見える振る舞い」をさせる
- 計画書と違う説明をする
- 周辺環境の悪い点を隠そうとする
- 周辺の人通りを自分で観察する
- 競合店舗を一軒ずつ訪問して調べる
- 計画書の数字に根拠を持たせる
- 現地調査で質問されそうなことを事前に答える準備をする
- 周辺のトレンドを正確に把握する
融資が通った起業家が、現地調査前にやっていたこと
実際に融資が通った起業家の共通点を見てみると、こういう準備をしていることが分かります:
- 観察の徹底:計画書を書く前に、開業予定地の周辺を朝昼晩、複数回観察している
- 競合調査の詳細化:単に「競合が3社」と書くのではなく、各競合の営業時間、価格帯、客層、人気の有無まで記録している
- 顧客ヒアリング:実際に周辺の人に「こんなサービスがあったら来ますか?」と聞いて、需要を確認している
- 地域トレンドの研究:ネット記事ではなく、自治体の統計データ、商工会議所の情報などを参考にしている
現地調査の時に、実際に聞かれることと答え方
担当者が現地に来た時に、こんなことを聞かれる可能性があります:
- Q:「この周辺で、お客さんが一番多い時間帯は何時ですか?」
A:実際に観察した結果に基づいて「○時~○時にかけて、サラリーマンが多く通ります。ランチ時はさらに人が増えます」と具体的に答える - Q:「競合店舗は、実際にどのくらい忙しいですか?」
A:「昼時は満席に近いです。客単価は約○○円で、月の営業日数は○日です」と、自分で調べた情報を提示する - Q:「この立地に出店した理由は何ですか?」
A:「複数の候補地を検討しましたが、○○という理由でここを選びました」と、検討プロセスを示す
カフェを開業する予定だった起業家が、現地調査で担当者から「近所に同じようなカフェが何軒ありますか?」と聞かれました。
融資が通った起業家は「5軒あります。その中で、私の店が提供できるのは『ノマドワーカー向けの高速WiFi環境』と『夜間営業』です」と、競合との差別化を具体的に説明しました。
一方、融資が通らなかった起業家は「競合は2軒だと思います」と答えて、市場把握が甘いと判断されました。
実は、現地調査は「あなたの事業知識を試す場」
現地調査の本質は、「あなたが本当に、その立地で商売が成り立つと確信しているのか」を確認するプロセスなんです。
担当者は、あなたが周辺環境をどこまで研究しているか、競合についてどこまで詳しいか、そして予想外の質問にどう答えるかで、「この起業家は本気で準備している」「それとも、何となく始めようとしている」かを判断します。
つまり、見た目を整えることより、知識を深めることが重要なんです。
最後に、正直なところ:
創業融資の現地調査は、決して「引っかかりやすい検査」ではなく、むしろ「あなたの準備を認める機会」なんです。
しっかり周辺を観察して、競合を研究して、市場を分析している起業家なら、その場で担当者に堂々と説明できます。その説得力が、融資判断を大きく左右するんです。
もし現地調査が予定されているなら、看板を磨くのではなく、周辺の人通りを数えたり、競合店を訪問したり、地元の商工会議所に相談したり。そういう「本物の準備」をしてください。
その準備が、現地調査での説得力になり、最終的には融資承認につながります。
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